垂直落下式サミング

デビルシャーク/エクソシスト・シャークの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.0
子供を虐待死させた悪魔崇拝者の修道女により呼び出された悪魔ホオジロザメが、海水浴を楽しむ人間に悪霊を憑依させて騒動を起こす。人々を苦しめるサメにエクソシストが戦いを挑む。サメとエクソシズムを掛け合わせたハイブリッドムービー。
サメvsエクソシストとあるけど…、なかなか対決をみせてくれないし、それどころか大見せ場への助走をまったく感じさせないから、本当にみたいものを見せてくれるのか、どんどん不安になってくる。ひやひや!
好きなのは、けっこう最後らへんのサービスシーン。湖畔でお昼寝する水着ギャル。その寝姿を謎のオヤジが白昼堂々とスマホで盗撮する様子をワンカットのなが回しで撮っているんだけど、そのBGMの音量がバグっていて、まったくもって重要なシーンではないはずなのに、徐々に劇半のボリュームをあげて観客の緊迫を煽ってくる。
これはっ!なにかが起こるのではっ!?、ムムムっと画面に注目していると、ビキニの布がうっすいもんだから乳首がポコッてらして…、女優さんが気の毒になってしまった。こういうの普通だったら「得した!」って気持ちになるはずなんだけど、なんかもういたたまれなくて…。あれ安い水着だろ。素材をみたかんじ、ドンキとかで売ってるなんちゃってパーティーグッズじゃない?ちゃんとしなさいっ。
そんで、盗撮されたギャルが目を覚まし、よく寝たそろそろ帰ろうかしらと起き上がった次の瞬間、何かに気付いて叫び後退りすると、ナイフを持ったシスターが血濡れに、さらに湖から女が上がってきて、シスターを羽交い締めにして水に引き込む!そして、サメの目が妖しく光るっ!なんだこの、畳み掛けはっ!まるで意味がわからんぞ!
何が起こっているのか、ひとつもわかんない。これまでのなんやかんやをみてきたから、断片的に意味合いを拾ってうっすらとしたものは感じ取れるんだけど、それを確信をもって物語だと言うことができない。だって、わかんないんだもん。
映画における興味の持続は、次に何が起こるのかワクワクっ!どうなっちゃうんだろうドキドキっ!といったような画面に写る状況に対して生じるものであるはずなのに、本作は「これが何を意味しているのか知りたい!」という理性動物に備わる根元的な知識欲に訴えかけてくるスタイル。すっげえな。これが、セミプロの自主映画ってやつか。
映像作品としては最悪で、ほんとクオリティは終わってるけど、これを口汚く罵って貶めるほどの怒りとか憤りは、僕の心からは不思議と沸き上がってこないんだよな。
なんでだろ。全編にわたって女の子だらけで嬉しかったなあ、やっぱサメよりも水着のギャルがいっぱい出でてくるほうが重要だよなあ、そんな感じ、ネガティブな感想では締めたくはない。
やっぱ、かわいい映画だと思いますよ。子供みたいな。この前、従姉妹の家にお呼ばれして久しぶりに会いに行ったら、その家の子が本当にかわいくて、いい時間だった。おしゃべりの内容はとりとめのない断片で欠片で、遊んでたっておやつ食べてたって、すぐ飽きてチョロチョロ動き回るのに、もう超かわいくて、もうずっと見てたくて、そんなのもう家の子にして連れて帰りたいじゃないですか。
『デビルシャーク』には、喋りはじめの幼児のようなかわいさがある。そんな拙いのをいじめちゃダメじゃないですか。そもそも、よその子なんだし。叱らないし、怒んないし、甘やかしたいじゃん。
まあ確かに、ごく一般的な映画ファンには、オススメしかねる。泳ぐ前にうち上がって死んでるような低クオリティが粗製乱造されるサメ映画のなかでも、かなり上級者向けな一作なのは間違いない。