So

22年目の告白 私が殺人犯ですのSoのレビュー・感想・評価

4.0
冒頭から引き込む力が半端なく強い。刑事の妹の消息不明がどう絡んでくるのかを細い感覚で匂わせながらも、表舞台に立つ殺人犯とそれを唇を噛みながら眺めるしかできない遺族、そして刑事との精神戦がひたすら汗のにじむような緊張感をもって持続する前半。息を飲むように見入る。

何よりもノイジーでありながら神経を逆撫でてくる音楽が秀逸。ランダムで突発的な電子ノイズとdroneで構成された楽曲はどこか虚像の鏡面を作品全体に映し出し、芝居=リアルと逆行する見えない影を常に背後に忍ばせる、素晴らしい役目を果たし切っている。ある意味「いい曲」を一つも使わずカタルシスを感じさせるのは至難の極致だけど、それを見事に表現していたところにこの作品と作曲家の密なる親和性を感じた。

サイコでスリリングな描写が非常にスピード感のあるカット回しで展開していくので、ありえない現実にもどんどん浸かって引き込まれていく。
若干仲村トオルの芝居くささが鼻について(個人的な嗜好も大きいけど)、私が犯人ですよ感が先走っていたけど、そこは主役二人の演技になんとなく隠れた感じ。

ストーリーとしてはスタジオで四人が揃い、真犯人と名乗る男が核心の映像を見せるところで実は話は終わっている。というのも、感情が崩壊する刑事、感情が湧き出る殺人犯という時点をもって彼らはこのストーリーにおける存在力を使い切るから。そのあとの二人には何も話は残ってないので、そこから真犯人を追い詰めるラストが単調に感じるのは否めない。実は殺人犯ではなく妹のフィアンセだった曾根崎の心情や存在感を最後までもっと真ん中に描く方法はなかったかとは少し思った。真犯人を殺したくても殺せないもっと深い葛藤を持たせてあげたら違ったのかな。最後に旅立つ曾根崎があまり印象に残らないのがもったいない点ではある。

とはいえ音楽や効果音含めてサラウンドで聴かないとわからない極上のサスペンス感。事の顛末を最後まで飽きずに見れるかなり質の高い映画!
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