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『Eva & Leon』に投稿された感想・評価

ukigumo09

ukigumo09の感想・評価

3.7
2015年のエミリー・シェルピテル監督作品。本作が長編第1作の女性監督だが、米国で映画を学んでいたという事もあり、キャリアの初期はハリウッド映画の助監督として現場を経験している。ブライアン・デ・パルマ、ジェームズ・アイヴォリー、マイケル・ラドフォード、ソフィア・コッポラ、リドリー・スコット、ウェス・アンダーソンといった錚々たる監督たちの下で修業をした、フランス映画界には珍しい経歴の持ち主だ。
長編第1作ということで限られた予算や撮影日数の中、それまでの想いや経験を注ぎ込む映画監督は少なくない。フィルモグラフィの第1作を見ればおおよそ、その人物のことが分かると言われるほどである。そういう意味ではストーリーとは別のところにある彼女の個性や偏愛する映画の切れ端などを探しながら鑑賞するのもまた本作の楽しみ方の一つだろう。実際本作はほかの映画の切れ端が多いのが特徴で、とりわけ米国や英国の50 ~60年代の映画の切れ端が多く見られるのは監督の経歴や嗜好に由来するものだろう。
主人公エヴァ役はクロティルド・エスム。新人のころ出演したフィリップ・ガレル監督の『恋人たちの失われた革命(2005)』あたりでの日本語表記が、本来の発音のエムではなくエスムとなっていたのが尾を引いてエスムが定着しているようだ。本作ではベリーショートのボーイッシュな髪形が印象的である。

カフェのテラス席にいるエヴァ(クロティルド・エスム)の所にやって来たのは、11歳の少年レオン(フロリアン・ルメール)だ。レオンは孤児院から家出して、住所だけ知っている母親に会うためにやってきたのだ。孤児院から抜け出すというのは、劇中台詞でも出てくるようにディケンズの「オリバー・ツイスト」のようであるが、監督の頭の片隅にあったのは映画化されたデイヴィッド・リーン監督の『オリヴァ・ツイスト(1948)』やキャロル・リード監督の『オリバー!(1968)』あたりだろう。
こうして出会った2人はしばらくエヴァの家で一緒に暮らすことになる。本作のインターナショナルタイトルは『エヴァとレオン』だが原題は『美しき逃避行』。レオンの孤児院からの脱走や、レオンをすぐに送りかえすことなくおくる共同生活を逃避行と捉えている。エヴァの台詞でも「私たちボニーとクライドね」と実在の犯罪者2人組を挙げている。アメリカンニューシネマの代表作アーサー・ペン監督の『俺たちに明日はない(1967)』(原題は『ボニーとクライド』)として映画化され2人の生きざま死にざまは世界に衝撃を与えた。
エヴァにはしばしばメールでホテルの名前と部屋番号を入れて呼び出してくるジョン(ヤニック・ショクラ)という恋人とも愛人とも客とも呼べないような相手がいる。その時々で眼鏡やサングラスを変えて、タバコを吸い、酒を飲み、娼婦のような振る舞いを見せるエヴァはカポーティのというより、エドワード・ブレイク監督による映画化作品の『ティファニーで朝食を(1961)』のオードリー・ヘップバーンを思わせる人物だ。
このジョンという男にローマのホテルまで来いと言われ、エヴァと孤児の少年映画はローマを目指す。ほぼ強引に映画の舞台をパリからローマに移すという監督の初々しき大胆さが素晴らしい。エヴァはジョンの部屋に着くと、中に入ることなくドアの前で罵詈雑言を浴びせ、Fワードを連発しながら踵を返して去っていく。英語を解さないレオンはちんぷんかんぷんのようであったが、終盤彼が孤児院の職員に対して全く同じ身振りを見せるシーンは注目だ。
このまま帰るのはもったいないと、その後に訪れる別れが分かっていながら1日だけ一緒に過ごすローマは、イタリア映画のローマではなくウィリアム・ワイラー監督の名作『ローマの休日(1953)』のローマだ。2人でアイスを食べるシーンも用意されており、ローマで映画を撮りたくて仕方がなかった監督の心が透けて見えるのだけれど、エヴァとレオンもなかなか画になるコンビなので楽しめるだろう。

ヒッチコック監督の『裏窓(1954)』でジェームズ・スチュアートがミス・ロンリーハートやミス・グラマーと名付けていたように、エヴァは向かいのアパルトマンを双眼鏡で覗いて、その部屋の住人ごとに、沈黙の王様やいつも愛しあっている2人と呼んでいる。
このように監督が影響を受けたり、愛していたりする映画からの引用やオマージュに溢れていながら、それだけに止まらない魅力が本作にはある。生まれてきても、何らかの理由があって親に育ててもらえなかった少年と、妊娠しても堕胎してしまった女性とのデリケートな組み合わせは女性ならではの視点と言えるだろう。そして標本の蝶が、ゆっくり動き出しひらひらと飛び立つ幻想的でオリジナリティも感じさせるラストは、次回作への期待も高まる幕切れであった。