このレビューはネタバレを含みます
ドラムに没頭していた人間が突如耳が聞こえなくなる。
少し考えただけでも辛いこの状況を、音が遠くなる演出や主人公の葛藤によってリアルに体感できる映画だった。
聞こえない生活にある程度慣れた後、聞こえない事をハンデとして捉えず受け入れるのか、元の状態に戻るため手術するのか。
主人公は後者の選択をしたけど、どうしたって以前聞こえてたようには戻れない。
元に戻りたいと思ってる彼だからこそ些細な変化に違和感を覚える。
雑踏のガチャガチャした音、多人数との会話のし辛さ、聴き慣れた彼女の歌声の違い…
世界との距離感が遠い事をより強く感じてる様はとても複雑な気持ち。
更には彼女にとって自分がストレスになってたと気づき別れることを選択する。
描いてた未来とは違って、今生きているこの時間ってのは変化し続けている。
でも結局手術後お爺さんが話していた事が全てで、
『世界は動き続けてて残酷な場所にもなる。けど私にとってはその静寂こそが心の平穏を得られる場所だ。その場所は決して君を見捨てない』
最後これに主人公は気づけた。辛い感情が最後スッとして救われた気がする。
とても良かった。