ジャッキーケン

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~のジャッキーケンのレビュー・感想・評価

3.8
聴こえるということ(ただサブタイを言ってみたかっただけ)

てことでAmazonオリジナルでポスターに「セッション」味が滲み出ていてこれは新たなドラマー映画の傑作を予感させるものだと、火花飛び散るドラマー映画だと意気込んで臨んだが

これはサブタイの聴こえるということが沁みる良作だった、セッションのバチバチのドラマーラング映画だったら5億点だったけど蓋を開けたら難聴を患い一生連れそうものといかにして向き合うかを描き出した作品
音楽映画でもない、難聴から真っ向から向き合うまるで「クリード」のビアンカをメインにしたような作品

メタルを普段聞かない俺として音楽の暴力としか思えない冒頭の騒音のような演奏シーンが衝撃的でそれなのに画面はリズアーメドのみを映しているダークな美しさ

突然難聴になってしまったリズアーメドがドラマーとしての自分を一度捨てて施設に入る、そこでは自分のように難聴を患った人たちや生まれつきの子供たち、さらには薬物依存に苦しむ人たちがいてリズアーメドもヘロイン中毒を4年前にしていたとカミングアウトする。

メタルバンドとしてそこそこ良い暮らしをしていたリズアーメドだけに難聴を直すことに集中しようとするが施設のボスであるジョーが「ここは直すことを目的にした場所ではない、考えを変える場所だ」
そう言われたリズは最初こそ反対するのだが同じ症状を持つ人たちと手話を学び、子供達にドラムを教えることで以前の自分とは縁のない居場所を作り出していく

何もかも売り払い、難聴を治すべくインプラントを埋める手術をするのだが…

ここからがミソで「聴こえる」
健常者には当たり前なことが当たり前でなくなる不安と心地よく聞いていたはずの音楽が騒音にしか聴こえないというなんともいえない術後の状況にリズと共に絶望してしまうが実は聞こえなかった頃の方が良かったんじゃないかという最後の安らぎ

「セッション」のようにバチバチなバトル映画でもないしカッコいい音楽映画でもない病気と真正面から向き合う、「クリード」のビアンカがいかにスゲェかも分かる作品