くろさわ

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~のくろさわのレビュー・感想・評価

4.2
サウンドデザインが素晴らしく、映画館で体感したかった映画。
家で見るならイヤホンが良いかもです。

映画館では見ていないけど、配信の新作ということ、想像以上に素敵な映画だったので書きたいと思います。

アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、音響編集賞にノミネートされているAmazonオリジナルの新作『サウンド・オブ・メタル』。

ハードコア系のバンドでドラムを担当しているルーベンは、突然両耳が難聴になってしまう。もがきながらも支援してくれる施設で暮らす中で手術して難聴を克服し、全てをやり直そうとするが、、

ルーベン役のリズ・アーメッドの演技、そして、サウンドデザインがむちゃくちゃ素晴らしかった。
第三者視点の音声、ルーベン視点の音声を組み合わせることで、同じ視点で体感することできた。
特に後半のルーベン視点の音声は初めて体感する音で衝撃を受けた。

また、難聴という病気を通してルーベンの変化が魅力的だった。
もがき苦しみ、人から支えられ、そこで新しい生き方を見つけながらも自分の中で未来を見つめ直し行動する、そして、その結果に対して受ける。
音を通して、自分もルーベンの気持ちを共有できた気がした。


たまむすびで町山智浩さんが紹介されていたけど、ルーベン役のリズ・アーメッドは実際の難聴者を演じるためにノイズキャンセルを用いて演技をしていたらしい。
また、作名の意味も良かった。冒頭ハードコアバンドのライブから始まるため、作名のサウンドオブメタルの意味はバンドの音かと思いきや、実は他を意味しているみたいだ。


普段、当たり前に出来ていることに対して見つめ直したいと思った。
目が見えて本が読めること、身体を動かして汗を流せること、耳を使って音楽を楽しめること、映画を楽しめることが当たり前と思ってしまっていた。今、出来ている間になるべく楽しみたいと思った。

失ったものと全く同じものを取り戻すことはできない。失った上で、どう生きるかを考える、失ったのではなく何かを得たという考えを持つことが、新しく生き直すことなんだと気付かされた映画。