Nemo

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~のNemoのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

すごい
今までで一番価値のある静寂を聞けた。

・主人公ルーベンの強がっているけど孤独で寂しいか弱い男の瞳がすごかった。元々なのか演技なのか?演じたのはリズアーメッドさんね。初めて観たけど、忘れられなそう。

・「聞こえないことを障害と思っていない。治すものだと思っていない。」これって難なく自立して生活できるレベルまで到達できた時に思えることだよなあ。家族とも切り離してあんな閉鎖環境を作る訳はそこにあるのかな。普通に聞こえる人も混じって生活していてもそう思うのかな。ユートピアめいたディストピア。恋人という存在が外部にいることで、なんの成長もしないただ時間が流れるだけの怖さに飲み込まれないで良かった。いや、良かったのかなあ。コミュニティにとってかけがえのない存在になれたぬるま湯に浸って過ごす選択肢も幸せだったのかな。

・聾者の聴体験すごかった。いろいろと種類や程度があるんだと思うけど、主人公のタイプは全く聞こえないわけではなくて、ボボボボボと血液の流れる音が聞こえた。手術したら絶対に良くなると信じていたけど、大枚叩いても機械的な振れ幅のある不快な音になっただけだった。恋人と再会して、パーティに参加して、街を歩いた。その後耳の装置を外して、無音になったのは何もかもから解き放たれたようにも思えたし、何もかもから見放されたようにも感じた。幸せってなんだろう。何もかも失って一番遠いところからのスタートになったところで終わったけど、いつかルーベンの幸せに満ちた笑顔が見たい。
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