Hiroki

ガラスの城の約束のHirokiのレビュー・感想・評価

ガラスの城の約束(2017年製作の映画)
3.6
大好きなデスティン・ダニエル・クレットンの作品で楽しみしてたのだが、製作の時点で会社が倒産してしまったり、主演でキャスティングされてたジェニファー・ローレンスが降板したりしながらやっと2017年にアメリカ公開されたのに日本では全然公開が決まらず2019年やっと公開されたという、いわくつきの作品。

ニューヨークマガジンのコラムニストであるジャネット・ウォールズの回顧録が原作。
内容はマット・ロス『はじまりへの旅』のような、子供を学校にいかせず社会から隔離して自分の価値観を叩き込んで生きている父親とその家族の話。
今作はキャストとか脚本とか音楽とか衣装とか全然悪くないし、むしろ好きな方だと思うんだけど、根本的なところが許せなかった。
物語のラスト散々酷い目にあってきた主役のブリー・ラーソンが唯一くらいに父親(ウディ・ハレルソン)が大学の学費を工面してくれた善行を思い出し、父親を許す場面がある。そして父親は死んでしまうけど残りの家族が集まって感謝祭で父親の思い出話なんかして感動のハッピーエンド…

これが非常に引っかかった。

実際の話なので彼女自身が本当に最後に父親を許そうと思ったのならそれはもちろん否定はしない。
しかしそれを美談のようにして父親がしてきたことを肯定するのはいかがなものか。彼がやってきたことは明らかにDVでありネグレクトである。子供を外界と遮断して親の考えが正義だと信じ込ませて、親が唯一絶対的な存在だと思わせるような行為は非常に危険。いまの社会や政治に不満があるのは構わないけど、その世界を体験させないで拒絶して遠ざけていても、なにも解決しないと思う。
家族の在り方なんて千差万別で何が幸せなんてわからないけど、親の言うことだけが正しくてそれ以外の世界を遮断するなんていうのは絶対に間違っている。個人的にはそう思う。
なのでそういう家族像を見せられて、最後に「それでも幸せだった」と言われるのは全然納得できなかった。

キャストは独善的な父親ウディ・ハレルソンも、喧嘩しながらも従ってしまう母親ナオミ・ワッツも良かったです!とてもダメなやつらだなぁって思えた。
でもブリー・ラーソンがちょっとイマイチだったかな。やはり最初にキャスティングされてたジェニファー・ローレンスの方が適役だったかも。

デスティン・ダニエル・クレットンは新作『黒い司法』も公開されてるけど相変わらず重めの話っぽいな。観に行くとおもうけど。

2020-13
Hiroki

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