森崎

くも漫。の森崎のレビュー・感想・評価

くも漫。(2017年製作の映画)
4.0
ちょっと待って普通に面白かったんですけど…。エンタメとしても、闘病経験の実録物としても普通に面白かったよ…?

「脳みそ夫が主演した脳神経外科にお世話になる映画」
「風俗でのお楽しみ真っ只中でくも膜下出血に襲われた男(実話)」
とか、どう表現してもそれなにどういうこと?と興味の出る話とはいえ芸人主演だからVシネくらいの面白さがあればいいかなと思っていたら嬉しい誤算。平田満に大高洋夫に板橋駿谷と個人的にテンションの上がる俳優陣も相まって(これは面白いやつだぞ)と引き込まれた。ちなみに救急隊員にはオバアチャン、ラジオで流れる漫才でウエストランドも出てます。

すわ腹上死か!?という笑えない悲劇をくぐり抜けた先の風俗通いを家族にバレないように祈るというある種の喜劇。それに平行して術後の経過や症状の説明など、当事者だからこそ知り得た心情や病院内での出来事が時に重く、時にあっけらかんと進む。このバランスがよかったんだろうなあ。
板橋駿谷のどこかドライで楽観的な石毛先生も良かったし平田満&立石涼子の両親の妙な説得力も温かかったし大高洋夫はじめとした親族襲撃時の服の色分けはなんだか楽しいし。脳みそ夫のよそよそしい感じも段々としっくりくるようになってくる。

「バットで殴られるような激しい痛み」というくも膜下出血の症状をくまにバットを持たせて表現した「くも膜下出血イメージキャラクター『くもマン』」の存在も良かった。お目にはかかりたくないけれど。フォルムを原作漫画のくまモン寄りから映画仕様に変えると一層凶悪になったダンガンロンパのモノクマのようになるのも死が近いようでおっかない。


そのフォルムの違いを知ったのは原作漫画が出てくるエンドロール。観た後で気になってすぐ調べてみたら話の半分ほどまでウェブで再公開していたから一気に読んだけど、こっちも読ませる力が凄くて面白い。是非に。
森崎

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