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エルネストのりのレビュー・感想・評価

エルネスト(2017年製作の映画)
3.6
損得や功利ではなく、価値に生きた男フレディ。そのまま学校に通っていれば、首席での卒業も夢ではなかった。しかし、祖国の危機にいても立ってもいられず、帰国し、革命のために戦うことを決意する。
彼の生き様は多くのものに影響を与えた。自己の信念に従って生きること、つまり内発性に溢れる姿は、多くの人の心を揺らがした。エルネスト自身もチェ・ゲバラに感化されていたが、彼自身も他者に畏敬の念を与えるほどの人物になっていった。これこそが、感染的模倣(ミメーシス)の好例である。
現在の日本において、「革命だ!」とのたまう者は冷やかな目で見られる。本作の舞台、キューバでもそうだったのだから、尚更白い目が向けられる。だが、革命への志向を失ってしまってよいのだろうか。連合赤軍もとい、革命に燃えていた人は「理想」を掲げていた。しかし、今では美学が、誰にバカにされようが、理想に生きて理想に死ぬ、失われている。政治的無関心しかり、若者の幸福率(なんちゃって幸福)の高さ然り。現状に甘んじて生きることは、すなわち思考停止で楽な人生である。だが、問題意識なく生存することはゾンビ的ではなかろうか。と、左翼みたいなことを言ってみる。
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