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ダゲール街の人々のyuzuhoのレビュー・感想・評価

ダゲール街の人々(1976年製作の映画)
4.3
"小売店の中に流れる時間に興味がある"

同じ空間内にいても待たされる客と淡々と手作業をこなす店員とでは主観的な時間が違う、当たり前だけどそれを客観的に観られるのが面白くて

店内という店主にとってのパーソナルな空間の中に流れる主観的な時間というものはその人間の人生を見ているような感覚に陥るなんとも不思議なもの

時計やメトロノームなど客観的に流れる刻一刻の時間を強調させるオブジェクトが時折出てきたり、数えるという行為を重ねたりするのもアニエスヴァルダ本人が掲げている主観的時間と客観的時間という概念が根底にあるのかなと思ったり

こういう当たり前のように毎日同じ店主がいて同じ物を売っている小売店にもそれぞれパーソナルなストーリーがあって、その内容云々ではなくどんなに小さいことでもそれを大切にしながら毎日を暮らしていると思うと、人間への愛くるしさが止まらないし、"一番撮りたいのは市井の人々"と本人も言っていた通り、アニエスヴァルダはそれを表現して鑑賞者へ伝える天才だと思う

香水店の店主夫妻素敵すぎてほっこり
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