フィネシル

愛国女性のフィネシルのレビュー・感想・評価

愛国女性(1979年製作の映画)
3.9
美しいシーン、印象的なシーンはいくつかある。たとえば前者は最後の降りしきる雪、後者は公安の仕事をするかたわら夜は女性の部屋を覗き着替えなどを盗み見ている男性を焦点人物の歴史教師の女性ガビが見つけ、話しかけるシーンなど。

特に後者のシーンはアドルノの愛弟子という監督クルーゲの「コンテクスト」(作中でわざわざ言及されていた)が与えられると、政府と市民の相互監視と公共性を象徴しているのかとか考えさせられる。

まなざす主体であり続け、戦争に代表される男によって作られてきた歴史をまなざされる客体であり周縁的な立場に追い込まれがちであった女性が変える試みをテーマとしているともいえるので、フェミニズム批評の観点からも面白い批評ができると思う。

しかし全体を通じて—居眠りをする程ではなかったが、晦渋でなんといっても冗長に感じられてしまうのが欠点。本よりもむしろ映画にその輝く場を見出した作品というのもあるが(ファイトクラブとか)、本作はむしろ本の方が面白くなったのではと思ってしまった。
少なくとも映画館よりもむしろ巻き戻しとかしながら家で見る方が向いている珍しい映画だと思う。