Natsu

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのNatsuのレビュー・感想・評価

4.0
久しぶりにこういう映画を観た。2017年の東京に生きるわたしたちのための映画。見慣れた渋谷、新宿の街と人がとても息苦しくて、気持ち悪いんだけど、時折ふと眩しかったりドキドキしたり、観終わった後の帰り道はいつもの雑踏に妙に安堵して、足取りが少し軽かったりする。

孫家邦さんも仰られていたように、この世界に向き合うための恋愛映画であって、みんな大好きセカイ系とは真逆にある作品。決して肌触りは良くないが、私はこっちも好きなので多くの人に観てほしいし、鈍感にならないでほしいと思う。

詩集を映像化するという面白い試みで、咀嚼に時間がかかる言葉たちが次々に溢れるのだけれど、ふいに素敵な画があらわれて隙を与えてくれるので、なかなか心地良いバランスで鑑賞できる。
「原作をいかに忠実に再現するか」コンペのようになっている昨今の実写化。最果タヒさんの詩集を石井監督らしい解釈で撮った今作のような、原作をなぞるだけではない作家性を持った作品が増えれば、邦画界も少しはまともになるのにな。

池松壮亮という役者の生き様を体現するような演技がとても好きで、今作も素晴らしいの一言だった。できるだけ長く観ていたい。
松田龍平の柵越え。煙草の火。谷崎潤一郎。青い月。
Natsu

Natsu