Chico

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺんのChicoのレビュー・感想・評価

4.5
監督レミ・シャイエ
製作フランス、デンマーク(フランス語)
原題TOUT EN HAUT DU MONDE(世界の頂点)

舞台は19世紀ロシア、サンクトペテルブルグ。14歳の貴族の娘サーシャは両親から華やかな社交界デビューを期待されている。周りの女の子達は王子に夢中だけれど、サーシャには気がかりなことがある。それは1年前北極探検に出発し、消息不明となった敬愛する祖父のことだった。艦船、ダバイ号の遭難により、いまや祖父の名声は地に落ち、一族の名誉も失われつつあった。社交界デビューの舞踏会の日、サーシャは祖父の部屋で、偶然、航海に関する重要なてがかりを発見する。訪れた王子に船の捜索を依頼し、祖父と祖父の船を見つけ出そうとするが。。。

アニメ黎明期のような、例えば;白雪姫(初期1937年)、雪の女王(1957年)、白蛇伝(1958年)等を彷彿させる懐かしい絵柄。シンプルでいて人物の動きはなめらかで表情豊か。
輪郭線のない絵柄はすべて作画、(乗り物は全て3Dモデリング)の上からのベタ塗り、人物は製作上の制約のために細部を排除してデフォルメ化されている。監督曰くペーパーゼロの作品、すべてデジタルだとのこと。

色と色の境界線で輪郭を表現するのは西洋絵画の主流(日本は線画が中心)だけど、色を並置分布させ、隣り合う色同士を効果的に見せる画面は印象派絵画のようで、一見パッチワークのような配色も全体的にくすんだパステル色を使うことで統一感が生まれている。それによって、本来の色彩の表情が現れ、すごくシンプルな絵柄なのに景色や、乗り物も躍動感があり、光や影、空気感もリアルに感じた。非常に美しくて見入ってしまう。
そして、船や船上での描写も興味深い。実際に船に乗ってそれぞれの動きを確認して作画の参考にし、音も実際のものを録音して使用しているそうです。

作風は冒険ものとはいえ全体を通して落ち着いていて(セリフが少ないのもある)、過度な感傷表現がなく心にスッとはいってきます。物語も王子、貴族などのワードから想像するようなラブストーリーなどではなく、周りの人の力を借りて困難を乗り切るサーシャの心の成長に重心が置かれています。子供はもちろん大人も充分楽しめる作品です。

アヌシー国際映画祭・観客賞、第23回文化庁メディア芸術祭・アニメーション部門優秀賞、 TAAFグランプリ、等数々の賞を受賞していますがそれに値する素晴らしい作品です👏👏👏👏👏
Chico

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