YukiSano

レッド・スパローのYukiSanoのレビュー・感想・評価

レッド・スパロー(2017年製作の映画)
3.2
ハニートラップ訓練を受けるロシア女スパイもの。彼女が欺くのは、標的か、国家なのか、観客なのか、という話。

ハリウッドには珍しい冷淡で渋い雰囲気で、荘厳なロケーションや音楽がロシア描写に威厳を持たせている。

しかし、そこまで重厚にしていても日常会話をロシア人達が英語を話し、都合のいい時だけロシア語を話す。また時代設定が古いかと思ったらSNSの話が出て現代なんだーと思ってたら情報取引は昔ながらのフロッピーディスクだった。そういうものなのか、よく知らないが凄くリアリティが削がれて見えてしまった。

ジェレミー・アイアンズやシャーロット・ランプリングなど名優の存在感に負けないジェニファー・ローレンスの体当たりの演技には感服する。

しかし騙し合い、探り合いばかりで、主役のジェニファーに共感できなくなってくる上に終わったかと思ったら罠がやってくるので、起承転結が分かりにくく疲れてしまった。

これほど長いとストーリーテリングだけでなく、主役の背景や、社会問題を上手に絡めてもらわないと途中で飽きてしまう。見た目は重厚なのだが中身が軽く感じる。

確かに、どんでん返しは面白かったけど、女性ならではの恥辱と悔しさを乗り越えて辿り着く先にあったものがアレだけだと物足りない。10年前なら面白かっただろうけど、今の時代には古くさく感じる。

マーベルのブラックウィドウの単独映画も、ロシアの女スパイものらしいので、この作品が壁として立ちはだかるかもしれない。あちらには派手なアクションだけでなく、女性が国家に挟まれさながら個人として自立する様をさらに痛快に魅せてくれることを期待してやみません。
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