フジマークス

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択のフジマークスのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

1話目は、仕事中に怪我をしたという男と、弁護士の女性の話。
女性と男はもはや、母親と息子のような関係と言っていい。女性が男の乗る車に向かう時、母親の買い物を、車で留守番する息子に見えた。さらにはワガママな息子に「黙らんと下ろすで!」とオカンが言うような、そんな展開となる。
男が人質を取って立て篭もる時、その場にいた刑事や警察はまるで父親のようだ。ああしろこうしろ指事する割には自分では行動せず、解決をするのは女性であって、多くの家庭で母親が強いられる状況に似ている。
しかし、男が脱出の助けを女性に頼むが、当然女性は母親ではなく、仕事中の1人の社会人でしかない。男の脱出を手助けする選択の余地もなく、男は呆気なく捕まる。
極めてフェミニズム的物語といえる。

2話目も同様にフェミニズム的である。
今度は家族が物語となっており、1人の女性は、生活の糧にするために砂岩を老人から買い取ろうとする。夫婦での計画のようだが、男性は主体的に行動せず頼りにならない。
砂岩を買い取ることは、老人の立場を考えると少し後ろめたいことであるが、それでも実行することは生活のために大切である。その後ろめたさを理解しながらも、主体的に計画を実行していく主人公の女性は正しい。
この主体性が、家族内において、ある種リーダーが悪者のようになってしまう時と似たような状況が伺える。
家族構成のなかで女性が強いられる、居心地の悪さが語られていたように思える。
主人公の女性は、家族ぐるみのコミュニティ内でも主体的に家事をこなすような立場となる。一方でその後、1人でタバコを吸いながら、買い取った砂岩を眺めている様子は、家族構成のなかで立場を強いられているようで、その状況のなかでしっかりと計画の実行を選択し、目的を達成している強さのようなものが伺える。

3話目。
こちらは、1、2話目と打って変わって、1人の女性の孤独や、人との関わりへの欲求といった、個人的な心情を取り扱っている。
ボーイ・ミーツ・ガール的な作品と言って良い。
しかし、この話は、ガール・ミーツ・ガールである。
男による女性への下心を含んだ視線、異性への欲望のようなものはなく、牧場で働く孤独な女性が、偶然出会ったこちらも弁護士の女性と、友人関係になりたいという話である。
牧場の女性は、4時間かけて別の街にいる女性のもとに会いに行き、あてもなく街を彷徨う。職場で待ち伏せしたあげく、振られてしまい、また4時間かけて家に帰る。まるでストーカー男が主人公のフランス映画のように。
しかし、これまでの映画になく、女性と女性の映画であり、同性愛が描かれているわけでもないため、主人公が求める人間関係が、特定の人物を対象としない。これまでの恋愛映画が描いてきた範疇からこぼれ落ちていた、より普遍的ともいえる人との繋がりへの欲求と、孤独についての物語といえる。
馬は美しく、犬は可笑しく撮られていた。
牧場の女性が4時間車を走らせた先の街を捉えたシーンで、極めて西部劇的なショットが2つあった。
路上を砂埃が風の形をしながら吹き抜けるショットと、街並みを捉えたショット。
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