カラン

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択のカランのレビュー・感想・評価

4.5
ケリー・ライカートが描くある女たちのオムニバスは、モンタナ州が舞台の映画で、16mmで撮影された。

3つの短編のアンソロジーではあるが、女たちの微妙な重ね合わせ方はキェシロフスキのトリコロールのようである。

冒頭の遠くそびえる山々を奥にして、手前には長く、非常に長く列車を映した粘り強いロングショットが印象深い。不穏であるし、何かが持続する予兆がして、厳しい美しさがある。クレジットを流しながら、峻厳な人生の鉄道を映すのだが、警笛を鳴らす貨物列車であることもしっかりと映している。本作は女たちの仕事の話である。

この冒頭の後、左に裸のローラ・ダーン、右にこれまた裸のジェームズ・レグロスがおり、女は遠い目で浸っており、男はいそいそ下着を身につけている。それぞれ陽が差す寝室と人工灯のバスルームにいる2人が、廊下から90度離れた位置に映しだされている。ジェームズ・レグロスはミシェル・ウィリアムズの旦那役で、不倫している。下着をつけたローラ・ダーンはベッドの左端の窓側に寄っている、1人だが。ジェームズ・レグロスが服を着てやって来ても、2人は2人で映らない。レグロスが声をかけて出て行く時も、ローラ・ダーンは笑顔のレグロスの背後壁の右端の円鏡の中に囚われている。この後、ローラ・ダーンは仕事に行き、事務所の扉を開けて入ってくる時にやっと、画面中央にくる。しかし、困ったクライアントが待っているわけだが。。。カメラは女たちの内面が疎外されていることをはっきりと映している。見えないものを露出させたのだ。見事である。

この冒頭の画面作りの強度が続くなら、☆5としたところ。この後も良いのだが最高レベルではなかったかも。女が女を描いたもので、最近観たなかでは映画的なレベルが最も高かった。フェミニズムのレベルではなく、映画的なレベルの話である。



レンタルDVD。画質はなかなかのざらつき。半分わざとなのだろうが、うーん、もう少し、、、。音質はかなり音圧が低くて、上げきらなかったので不明だが、悪くないのだろう。55円宅配GEO、18分の8。
カラン

カラン