ペイン

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択のペインのレビュー・感想・評価

4.5
日本劇場未公開となった
ケリー・ライカート監督作。
 
ある種、S・クレイグ・ザラーやテイラー・シェリダンの暴力性やアクをとことん薄めたような作風と言える部分があり、つまるところ今をときめくクロエ・ジャオと非常に通底するものがあるように思う(※あと近年の作品で近しいテイストと感じたのはデヴィッド・ロウリー監督のデビュー作『セインツ -約束の果て-』)。

今上記で挙げた作家や作品たち(※特にロウリーとライカート)の根幹には、アメリカンニューシネマ最重要作と言い切っていいかもしれないモンテ・ヘルマン『断絶』の面影がちらつく。一見何も起こっていないような、取るに足らないようなエピソードの羅列から“普通の人々”の心の機微、人生のはかなさ、この世の無常等が“うっすら”と浮かび上がってくる。

はっきり言ってザラーやシェリダンをとことん薄めたテイスト故に相当地味で一見歯応えのない作品に感じるのは間違いないのだけれど、味の濃い料理等で酸性に傾いてしまった我々の体を整えてくれるアルカリ性食品(梅干しや味噌汁等)のような浄化される感覚がある。私はかなり好きな作品。
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