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否定と肯定のkazuのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
4.0

ナチスによるホロコーストでガス室での大虐殺があったかどうかをめぐる裁判の話。
それを否定する歴史家アーヴィングと、肯定派のユダヤ人学者デボラの実際にあった裁判を映画化したもの。

信じられないけどこれは最近の話で、裁判の費用はスピルバーグを始め沢山の支援者によって支えられたそうですよ。

その場にもその時代にも生きてない私は沢山の証拠から疑うことなくホロコーストは本当にあったと信じてきたので今になって何故と言う気持ちと、負けることはない思いながら観てはいましたけど、この歴史家(アーヴィング)はヒトラー無罪説を訴えてる男で、生き残りの女性にさえもその腕に押されたナンバーの焼き印を指差し、『その刺青で一体幾ら稼いできたのか?』と非情なことを言ってのける冷血人間ぶり。
そこに加え人の言葉に耳を貸さず偏った言い分を吠えまくるその頑固者に、このまま押し切られてしまうのではとヒヤヒヤするシーンが多々ありました。
真実を話す人に対し二重三重に辱しめ傷つけ嘘つきだと吠えまくる。
トテモヒトトハオモエナイ・・
頭がおかしくなりそうでした・・

普通ならカーッとなって感情的な言葉を吐いてしまいそうだけど(学者デボラも最初は感情的に・・)受けて立つ弁護団は冷静で優秀だった。
アーヴィングの数十年分の日記を読み言い分の矛盾点を見つけ出し証拠を合わせ突いていきます。
アーヴィングが口籠るシーンにはスカーーーッとしました‼︎

ヒトラーは戦争に負けると悟った時、アウシュビッツの証拠を全て焼き尽くそうと、二度も爆撃したけど思惑通りにならなくて本当に良かった。

デボラの台詞『あなた方の苦しみの声は届いた。あなた方は記憶され忘れることはない。』が印象的。

そして、胸にグサリと突き刺さった忘れられないもう1つの台詞は
『世の中は卑怯者だらけ。安全な時だけ居丈高になる』という弁護団の1人の台詞。
安全なこの時代だから良いも悪いも声をあげられるのですね・・

裁判の進め方は見応えがありましたし、他のテーマも深く考えさせられます。ぜひお薦めしたい映画です。
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