たくちむ

否定と肯定のたくちむのネタバレレビュー・内容・結末

否定と肯定(2016年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

目の前に見えているものは、私が「見たかった」景色でしかないのかもしれない。

ホロコーストという負の歴史の上で成り立っているこの世界。
ただ、その世界の上に立っていない人もいる。
彼らの存在に気付けないということは、無意識的に排他的な世の中を創り上げてしまっている。

もっと1つ1つの事象に対してフラットな目線で向き合いたい。
「当たり前」「常識」という言葉に隠れて一体どれほどの気づきや先人の声を見過ごしてきたか。

自分の人格や思想の根幹に響く作品。

================

人々が事象について話すことはどこまで許容されるべきなのか。
「ホロコーストはなかった」という発言自体は法で裁かれるべきだとは思わない。
相手を言葉で傷つけるという意味では、誰もがしている。

個人的に思うのは、その発言に対していかに責任をとれるかだ。
一度口から放たれた言葉は、場合によって鋭利な刃物となる。
その刃物を手に取るほどの責任があるか。つまり、説明責任の有無だ。
論理的に相手に説明し、反論や意見も受け入れた上で議論をする。
この態度がなければ、軽々しい発言は慎むべきだ。

本映画に限れば、アービングは法廷で自身の根拠を説明しようと努めた。
そのため、アービングの主張を世間は受け入れる必要があった。

もちろん、影響力の問題や他者への配慮という観点も大事である。
これらを十分に考慮した上での発言が最も好ましい。

ただ、これらを最重要事項にしてしまうと、議論に入るのが困難となる可能性が高い。
曖昧であればあるほど、感情が先行して嫌悪感が高まり、顔を向い合わすことも不可能になる恐れがある。

今後も「言論の自由」や「表現の自由」という問題は勃発するであろう。その時々に、本映画を回想しながら新たな思索を行いたい。
たくちむ

たくちむ