あき

否定と肯定のあきのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.5
人の数だけ、「正義」はある。そんなことを考えながら観た映画。

原告側のホロコースト否定論者アーヴィングもいけすかないんだけど、訴えられちゃった主人公の被告側デボラも感情的だし、法廷弁護士の素敵なおじさまも裁判で原告追い詰める時は結構ひどい言葉使ってるし、特定の人誰かに感情移入するというよりは客観的に観たからなのかも。

「勝つ」ための戦略と準備。とことん理詰めの弁護士軍団。でも血が通っていない冷徹人間なわけじゃなく、ホロコースト犠牲者を傷つけないための配慮や、夜ひとりでデスクに向かって必死で裁判の準備をしている様子にぐっときた。個人的には群像劇も好きなので、チームメンバーの闘いの様子ももう少し描いてもらえると嬉しかったかも。

原題のDenialのほうが、しっくりくる。ストーリーの中心となる裁判のテーマは勿論だけど、それに加えて、裁判中のデボラの葛藤とSelf Denial、そして、ラストのアーヴィングのDenial。一単語のタイトルだからこそ、ストーリーの中で印象的に使われていた。

面白かったというには重いテーマ。願わくば、相手に牙を向くようなDenialが減って、それぞれの正義や信条がリスペクトされる世であってほしい。
あき

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