デニロ

牝猫たちのデニロのネタバレレビュー・内容・結末

牝猫たち(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

山科ゆりが好きだった。

神代辰巳、田中登の作品は好んでよく観たが、何よりも山科ゆりが出ている作品は呆れるほどつまらない作品でもお金の余裕があれば観た。わたしにとってのロマンポルノと言えば山科ゆりのことだ。
今回のシリーズは特別仕様の一本立て興行で作家主義を貫徹。3本立ての玉石混合的な上映ローテーションの在り方とは違うし、観客も、劇場の臭いも違う。似たような製作条件だけど作家の準備期間は違うんじゃないだろうか。

本作はいかにもロマンポルノらしい題名。

デリヘルを生業とする男女やその顧客を主人公にし、その中で起こる縮小しつつある日本の経済を軽やかに或いは深刻に反映させている。

井端珠里はホームレス、真上さつきはシングル・マザーで児童虐待、美知枝は不妊症に夫の浮気、と問題を抱えながらデリヘル嬢として音尾琢真の事務所に勤めている。数年前から報告されている最貧困女子ともいえる彼女たちがどーしてこういった境遇になったかの説明はないが、あんなことやそんなことが重なってこんなことになってしまったんだろうとは容易に想像できる時代ではないか。
対する男どもと言えば、井端珠里の顧客である郭智博は、マンションのオーナーだがかれこれ10年ほど外出もせずに自室に籠もり日がな一日パソコンに向かい様々な掲示板を見ている。真上さつきの相手は売れない芸人でちょいと危険な男。得体の知れない薬を渡し、怪しげにセックスに励む。本作の中ではあまり書き込まれていないキャラクターだ。
むしろ真上さつきの息子の一時預かりを引き受ける何でも屋の松永拓野の方に今の日本の若者が描かれている。アパートの小さな部屋で碌に片付けもせずに暮らしている。預かった子供に痣があるのを認めて母親にやられたのかと、と確認する。自分にもそんな経験があるに違いない。それで親から離れて一人暮らし。親のようにならないように懸命に働きたいのだが思うに任せない。
美知枝の上得意は最近老妻を亡くした吉澤健。彼女を指名しても何もしない。そんな状態が続いたある日多めのお金を渡して、普段の日に会えないかと願う。美知枝は裸になり、お金を払っているんだから好きに触ってくださいと肉感で誘う。彼女に思いを寄せてしまった吉澤健はある日彼女を自宅まで尾行する。が、そこに見たのは夫と楽しそうに歩く美知枝の姿だった。その後、事務所を揺るがす事件が起こるのだが、ここでは超高齢化社会を生きるには決して幸福ではない社会をひっそりと描いている。

等々と書いていると深刻な社会問題映画が全面展開しているようだが、裸、セックス描写や緊縛のサービスもそれこそ盛り沢山で堪能できる。白石和彌監督のオリジナル脚本とのことだが只者ではない。

ラスト近くの井端珠里と音尾店長の絡みの場面は、被さる音楽もロマンポルノっぽくて、これは笑えた。
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