岩嵜修平

牝猫たちの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

牝猫たち(2016年製作の映画)
3.7
牝猫たち

現実は厳しく、しかし、白石監督の彼女たちに対する目線は優しい。
確かにポルノ。ロマンポルノとはよく言ったもので、エロさ以上に心情に訴えかけてくるものが大きい。エロいけど。
夜の池袋のリアル。デリヘルという非日常に関わる非実在的なニュースでしか見ないような人間たちのリアル。
僕たちは誰しも、ひきこもって日がな一日、ネット上で正義感を振りかざして脇の甘い人間に炎上させることだけを生きがいにする無気力な若者にも、妻に先立たれ心中の相手にデリヘル嬢を指名する老人にも、デリヘル嬢から子どもを預かりゴミ屋敷で面倒を見続ける青年にもなりうる。それが今の日本社会である。
主演女優3人の役柄のリアリティと身体の張りっぷりは見事。もはや白石組と言っても良い音尾琢真はカタギには見えないし、炎上させる店員役の金髪男子(顔がひん曲がってるのが良い!)も納得感が凄い。
主人公たちは全員が必ずしもハッピーエンドを迎える訳ではないのだけれど、やはり白石監督の目線は突き離しておらず、なんとなく、そのままで良いよと許容しているようで。
白石監督作品における男は、凶悪にしろヤバい奴らにしろ、欠点だらけで家庭生活に向いてない人ばかりなのだけれど、女性が主人公の本作においても、やはり変わらず、作家性とも言えるものなのだと。
岩嵜修平

岩嵜修平