【監督】
ゲイリー・ロス監督が手掛ける作品は、そのどれもが上質のコメディで、人間の葛藤や愚かさ、純粋さが描けていて、鑑賞後はキラキラとした気持ちにさせてくれる素晴らしいものばかりだ。
トム・ハンクスの出世作「ビッグ」、ケビン・クライン×シガニー・ウィーバー主演「デーヴ」、トビー・マグワイア初主演作「カラー・オブ・ハート」と、これぞ90年代を代表するコメディ作品、といっても過言ではないだろう。
ちなみに、本家「オーシャンズ11」監督のスティーブン・ソダーバーグは「カラー・オブ・ハート」にて制作スタッフとしてのクレジットがあるため、ゲイリーが本作の監督になるのは、なるべくしてなったと想像できる。
【スピンオフ?リブート?】
本作はあくまでも本家のスピンオフという位置づけなのだろうか。それともキャストを女性にしてのリブートとして、シリーズ化を目指しているのたろうか。
それがわからなかった。
本家のシリーズが始まった2001年、ジョージ・クルーニーでさえ40歳、他メインキャストは30代と若かった。
しかし、本作はサンドラ・ブロック(53)、ケイト・ブランシェット(49)、ヘレナ・ボナム・カーター(52)と、比較するとどうだろうか。
若い俳優陣として、アン・ハサウェイ、リアーナもいるがアンは本人役だし、リアーナはサブキャラ扱いだ。
よって、メインキャストの年齢から判断すると、恐らくシリーズ化は想定してないのだろう。
【ストーリーとサントラ】
ご都合主義で、かつ、後付けで「実は裏側ではこんなことしてましたー」といった流れは本家でもあるし、デートムービーとしてのテンポの良さは両作とも優れている。
しかし、本家は一応、義賊といった扱いだったが、本作はただの盗人である。
そのため、チームワークで悪人をやっつけろ!といったカタルシスはまるでなかった。
また、チームに加入するバックボーンも薄いため、見所である互いの長所を活かしたチームワークが繰り広げられていても「そんなに上手くいくか?」と、終始、懐疑的になってしまった。
サントラも時代なのだろう、22年前の本家ではオシャレに思えたが、2018年の本作では目新しさや選曲の良さがあまり感じられなかった。
ナンシー・シナトラの名曲「にくい貴方」(うたばんのOP曲)のアレンジも、使われるシーンもセンスを感じなかった。
また、カメオとして色々な豪華キャストが出ていたが、本家のブルース・ウィリスのようなインパクトはなかった。
【笑えたところ】
アン・ハサウェイの扱いが良かった。
本人役で出演しているのに、1億5千万ドルするカルティエの首飾りにゴージャスなドレス姿で、トイレに駆け込ませる脚本は、なかなか思い切ったなぁと感心した。ちなみに本家で盗んだ金塊も1億5千万ドルと同額なので、ちょっとした小ネタであろう。
また、ケイト・ブランシェットはアメリカンバイクに跨り、ロックテイストな衣装の役で、ロード・オブ・ザ・リング直後でのキャスティングであればそのギャップが見所になったであろうが、ブルー・ジャスミンのインパクトが大きすぎて、周りの評価ほどではないと感じてしまった。