スギノイチ

脱出のスギノイチのレビュー・感想・評価

脱出(1972年製作の映画)
3.0
当初はブンヤの荒木一郎が一味のイニシアチブをとるのだが、活動家学生の原田大二郎が暴走し始めてから雲行きが怪しくなり、潜伏先で殺人事件が発生してからは、主人公そっちのけでのそれぞれの欲望が暴走する。
特に、内ゲバの発端となるストーカー役の石橋蓮司のキチガイ演技は見物。

話の主軸があっちこっちに飛ぶ中、藤原喜久男とフラワー・メグの姉弟的な情愛ドラマが胸を打つ。
火炎瓶というワードが出る度に劇場が笑いに包まれていたが、同じ施設育ちの片割れのために、警官隊に向かってえいえいと火炎瓶を投げる姿は健気で魅力的。
ボートで離れ行く主人公を見ながら「ブラジルなんてきっとつまんないとこだよね。すぐに帰ってくるよ」と自らに言い聞かせる所なんて最高だ。

それなのに観客の奴ら、フラワー・メグが火炎瓶投げる度に笑いやがって、アバズレな女の子が好きな男のために頑張って戦ってる姿がそんなに面白いのかよ!
そんな風に憤っていると、上映後のトークショーで颯爽と登壇した荒木一郎自らが本作をボロカス言いだしたので力が抜けてしまった。さすがだ。
スギノイチ

スギノイチ