TaiRa

草叢/不倫団地 かなしいイロやねんのTaiRaのレビュー・感想・評価

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これが脚本家デビューの尾上史高に一年以上改稿させ、完成した尺オーバーの脚本をそのまま撮り、結果ラストをごっそりカットしてフィルムを自宅で焼いたという堀禎一。「ぼくは『草叢』を自分の作品というより尾上くんの作品であると思っている」だってさ。

夫が浮気した団地妻が廃品回収のうだつの上がらない男と不倫する。冒頭、自転車を押して歩く女と並んで歩く男。男が女の手ごとブレーキを握って止まり、キスをする。小雨が降って夜の街は濡れている。「一日中ゴミ集めて回ってると自分もゴミになったような気がする」と言う男。「あたし子供出来へんねん。セックスマシーンやね」と笑う女。ここにいる人間は死ぬ程の苦しみも無いが明るい未来もない。団地に鳴り響く廃品回収車のアナウンスが女を笑顔にする。お守りしていた隣人の子供を放ったらかして会いに行く。女は夫の浮気相手の女に子供が出来た、堕しに行くと言われ「産めば」と言ってみる。家を出ていた夫が帰って来たら足を使って靴下を脱がしてやる。いっそ捨ててくれれば楽かもしれない。夫には女を捨てる度胸もない。男の家には地元から出て来た前の女が訪ねて来る。「もう帰らない。子供死んじゃったの。もう居れないでしょ」不妊の団地妻に浮気相手の子供を堕ろす女、子供が死んで田舎を出た女。最後に女が働く工場の休憩所で同僚のヤンママと交わす会話。「子供とまた喧嘩しちゃった。家出る時いつも後悔するんです。もし事故とかで死んじゃってこれが最後の会話だったらって。一緒に死ねたら良いんですけどね」ラスト、女がベランダでタバコ吸ってる後ろ姿に初めて自由がある。ラストは色々あったそうだが全部消えた。投げっぱなしで終わるのも人生。
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