津次郎

トゥルー・グリットの津次郎のレビュー・感想・評価

トゥルー・グリット(2010年製作の映画)
4.5
西部劇にはバランスがあると思う。人が簡単に死ぬ、命がけで誰かを助ける、両者のバランスをとると、いい西部劇ができる──ような気がする。

隻眼のコグバーン(ジェフブリッジズ)は、恐れも情けも知らない老保安官だが、悪い奴らをあっけなく撃ち倒す一方で、蛇に噛まれたマティロス(ヘイリースタインフェルド)を命がけで助ける。殺すことと守ること、そのメリハリが本作をどうしようもない傑作にしていた。──と思う。

ラビーフはレンジャー隊を誇りにするいいカッコしいだが、所々まぬけを露呈させてしまう憎めない奴。役に立たないようでいて、ここぞのところで、320ヤード先の賊頭ネッドペッパーをカービン銃で仕留める。マットデイモンがいい味をだしていた。

マティロスはチェイニーを殺して父親の敵討ちをはたすのだが、蛇の毒で片腕を失う。
25年経って、コグバーンを尋ねるが3日前に亡くなっていた。
「昔の知り合いで、彼とにぎやかに旅をした」
しみじみして硬派なラストだった。

Bone Tomahawk(2015)は想定外の残酷シーンに度肝を抜かれたが生真面目な西部劇だった。そのシェリフと相棒の関係が、トゥルーグリットのコグバーンとラビーフに似ていた。トゥルー・グリット自体、勇気ある追跡(1969)のリメイクだとは後で知った。

いずれ西部劇というものは、終焉するジャンルだと思っていた。が、そんなことはなかった。ジョンフォードやセルジオレオーネがつくった教科書を、ペキンパーやウォルターヒルやイーストウッドがつないだ。古豪たちが築き上げた滋味をバスターのバラードやトゥルーグリット、あるいはSlow WestやBone Tomahawkにも見ることができる。
津次郎

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