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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のsonozyのレビュー・感想・評価

4.0
台湾のエドワード・ヤン監督の1991年『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』。
監督の生誕70年/没後10年、オリジナルの3時間56分版が4Kレストア・デジタルリマスター版で蘇る!
という事で、映画館で見るか悩んでいたんですが、この長さなので途中で寝る予感から思い切ってブルーレイを購入。

実際に起きた事件から着想したという本作。
60年代初頭の台北。戦後、新天地を求め中国から台湾に移住した人々(外省人)の物語。

高校昼間部の受験に失敗して夜間部に通うシャオスーとその家族(両親&長男&3姉妹)。
シャオス―の親友は不良グループ"小公園“に属すワル仲間のワンマオ、フェイジ―と、
不良たちにも顔がきく裕福な家庭のシャオマー(転校生)。

不良グループ"小公園“内部の分裂や、別のグループ"217"との対立。
シャオス―とシャオミンとの出会いと恋。
そのシャオミンは、ある事件で台南に身を潜めている"小公園“のボス(ハニー)の彼女という危うさ。
優等生だったシャオス―の兄のビリヤード賭博巻き込まれ事件。
反体制の疑いで国民党政府からの尋問を受け憔悴するシャオス―の父(公務員)。
度重なる問題によるシャオス―の夜間部退学と、昼間部試験への再チャレンジ。
"小公園“のボス(ハニー)が戻ってきてからの2つのグループの抗争・・・
と、物語はある種、淡々と、じわじわと悪い方向へ展開していきます。

シャオス―が学校の隣にある映画スタジオから盗んだ懐中電灯の光が効果的に使われています。
シャオス―が寝ている押入れの中や、湿度の高い台北の夜の闇など。

シャオス―は勉強もそこそこ出来るし、親友ワンマオやフェイジ―も、根っからのワルではなく、見た目は無邪気な少年なんですよ。
ワンマオはエルヴィス・プレスリーに憧れ、バンドでソプラノボイスの歌声を聴かせ、シャオス―の姉に外国曲の歌詞の翻訳を頼んだりして。
ただ、不良グループやワルとの小競り合いは日常茶飯事で、バット・ナイフ・銃なども身近にあるという環境。
更に、シャオス―の父の尋問に見られる、この時代の外省人集落の閉塞感。悶々とした感じ。
そして、多くの男子学生が憧れるシャオミンを取り巻く関係や友の裏切り・・
といった様々な流れから、シャオス―とシャオミンの衝撃のラストへ。

出演者たちの多くが未経験に近い少年少女たちという中で、ヤン監督は台本のセリフを一言一句間違えさせない完璧主義だったとのこと。

名作!マイフェイバリット!的な存在になるタイプの映画ではありませんが、映画史上に残る傑作と言われる作品を見れて良かったです。

http://www.bitters.co.jp/abrightersummerday/
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