ほおづき

羊の木のほおづきのレビュー・感想・評価

羊の木(2018年製作の映画)
3.5
人は本当に更生することが出来るのか?
隣人の過去を知っても、人は無条件で信じることができるのか? 
人が肌で感じることは大概正しい・・・

過疎化対策の国家プロジェクトとして、元殺人犯6人を住民に内緒で町に移住させるっていう設定がおもしろそうだなって思って見た映画。
ハラハラはしたけど終わり方がちょっと・・・


原作は『ぼのぼの』の作者さんが描いた漫画。映画とはまったく別物なおはなしで、しまっちゃうおじさんとかは出てこないんだけどw、移住してくる受刑者が11人もいて、受刑者以外にも危険人物が何人か出てきたりする。主人公は妻子持ちのハゲちらかしたおじさんで、いちいちぎゃあぎゃあうるさくて危なっかしい。
なんか全体的にデリカシーが無さすぎな世界観で、個人的には読んでいて不快だったんだけど、名作って言われてるらしくテーマ性やラストには確かに訴えかけてくるものがあった。
例えば、町には過去にも罪人を受け入れていた歴史があって、その末裔が今では立派に根付いていたってところや、受刑者が団結して更生に向けて努力していく姿が描かれているところなんかは、名作と言われる理由かもしれない。

そういう意味では、この映画は原作の良い部分が削り取られてしまっていた感じがしたんだけど、江戸時代にまでさかのぼる設定や、先祖がらみの復讐やらの結構スケールの大きな原作を、ここまでコンパクトで商業的な作品に変化させたのはふつうに凄いとは思う。

原作と比べて錦戸さんの役のキャラが嫌悪感もなく好感度が高くなっていて、ひょうひょうとした雰囲気がいい味を出してたと思うし、松田龍平さんのキャラも原作では昭和のオラオラ系チンピラみたいだったのが、イマドキの不気味な存在感のあるサイコパスになってた。あと優香さんがすごい。よくこの役のオファーを受けたな・・・っていうくらい勇気のある役だったと思うし、その他の役者さんの一癖も二癖もある怪しい雰囲気も良かったと思う。

原作と比べちゃうとどうしてもスケールダウンした印象があるけど、穏やかな町で元犯罪者が何かやるんじゃないかとハラハラさせてくれるっていう意味では、単体で良い作品にもなり得そうなんだけど・・・
それでもやっぱり、『パーマネント野ばら』や『紙の月』なんかでは印象的だった物語の印象をがらりと変えるようなシュールなラストが、この作品では裏目に出てしまった気がする。




ぜんぜん関係ないけど、田中泯さんっていう役者さんが演じているわけありおじいちゃんのエピソードが、twitterで読んだ『深夜のコンビニでちょっとわけありのおじいさんが働く話』っていう漫画と似てる。その漫画はシンプルですごくおもしろかった。