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ムーンライトのばんばんのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.2
好きな映画の一つになりました。これから観るかたに一つアドバイス。これをアカデミー賞作品賞受賞作品だと思わずに観てください。壮大なセットはなく、美しい男女が絡み合うこともなく、「泣ける」映画でもなく、ただただ時間が流れていく映画です。それはまるで人生のように。

人生なんか思ったようにいくことはなく、それでもどこかで一つだけ自分の中の真実があって、それをだいじにしていければいいのではないか。そんなことを考えさせられました。美しい色と形の映像。ポエムのようでいて、それでいて荒んだ現実も思い知らされます。

時代は車と家や装飾品で何となく察することができます。巧みな演出。アメリカの黒人の映画として、いかにもアメリカっぽい映像ですが、心の映画として、特に前半部分は邦画にも通じるところがあるのではないかと思いました。古くは「神様がくれた赤ん坊」「菊次郎の夏」など。

幼少期、少年期、青年期の3つのパートに分かれていて、どのエピソードの、どのシーンも「これ!」という答えがありません。だからこそ、観ているこちら側の思うことがたくさん積もっていきます。幕の内弁当的。その積もったものを誰かと語りたい。じっくりと観てくれた誰かと語りたくなる映画です。(そしてもう一度観たい)

アカデミー賞作品賞受賞作品だと思わずに、気軽にふらっと観に行ってください。
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