冒頭に流れるのはボリス・ガーディナー「Every Nigger is a Star」。そこからカメラは一人の売人へとフォーカスする。つまり、ケンドリック・ラマー『To Pimp a Butterfly』と全く同じ構成である。これは100パー意図的だろう。
つまり今作のテーマの一つは、明確にアメリカ黒人をめぐるものだ。「なぜ星のように輝くはずのニガーが売人などしなくてはならないのだ?」
ブラザーフッドがより強固な貧しい黒人コミュニティにおいて、ゲイであることは二重苦となり、本人を抑圧する。フランク・オーシャンが『チャンネル・オレンジ』でカミングアウトしたときの騒ぎを思い出してほしい。
つまりこの映画は明確にファーガソンやLGBT以降、というだけでなく、ケンドリック・ラマー、フランク・オーシャン以降、の地平にも立っている。
切なく、悲しく、そしてリリカルな傑作。