みおこし

ムーンライトのみおこしのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.0
仕事終わりに観ることになり、重い内容なのも分かってたのですが...本当に観てよかった。『ラ・ラ・ランド』も素晴らしかったけど、こちらも最高傑作に間違いはありません!2017年必見。

危険なスラム街に住むリトルことシャロンは、薬物依存症の母にネグレクトされ、学校では「オカマ」と罵らられいじめられている。そんな彼の心を癒したのは、近所に住む心優しい売人フアンと、小学校の同級生のケヴィンであった。

少年の壮絶な半生を、3人の役者さんが演じ分けた本作。小学生の頃、高校生の頃、そして大人になった頃の3部構成なんですが、とにかくシャロンを演じる3名の演技が見事。不器用で内気で、心に闇を抱えたシャロンの人となりを眼差しの変化ひとつで魅せてくれました。特に高校生時代を演じたアシュトン・サンダースはまだ若いのにここまでの表現力...。個人的にはシャロンのイメージは彼が強かったです。

オール黒人キャスト、とにかく俳優陣が天才的でした!
ナオミ・ハリスのヤク中母役も見事でしたが、オスカーを獲得したマハーシャラ・アリの存在感も圧倒的でした。登場時間は少ないですが、作中の彼の表情が目に焼き付いて離れません。シャロンがかろうじて自分を見失わずに生きてこられたのは、紛れもなくフアンがいたからであって。彼の人生に救いを差し伸べた、ある種の「神」のような人物。しかし、そんな彼にも決定的な欠点があり、それに葛藤しながらシャロンと向き合っていきます。
親友であり、シャロンにとって忘れ得ぬ人となるケヴィン役も3代に渡って違う役者さんが演じていましたが、これまた見事な演技でした。

日本に生きる私たちにとっては、目を疑うような出来事が作中では幾度も起きます。こんな危険な環境で生きるしかない子供達が世の中にはたくさんいるわけで。心に美しいものや、まっすぐな軸があったとしてもそれが苦しい日々の中で揺らいでしまう。色んな多様性が受け入れられる環境であれば、シャロンはきっと心を閉ざさずに済んだはず。しかし、置かれている状況が変わらなければ子供達が選ぶ道は変わらず、負の連鎖が続くだけ。目を背けてはならない現実を、鋭くストレートに描いていました。
しかし、絶望ばかりを描いた映画というわけではなく、闇の中でずっと生きてきたシャロンに文字通りの月明かりが差す瞬間もあって。彼の高揚感が画面を通して伝わってきて、思わず「幸せだ」って笑みが心から溢れるシーンがいくつもありました。あえてワンショットの長回しだったり、どアップで俳優さんの顔を捉えたり、演出も感動的。

2時間まったく飽きることなく、3部に渡るシャロンの生き様をしかと見届けられました。車に乗るシーンがどの部にも登場しますが、その度に同じ景色なのにきっとシャロンにとって見え方は180度違っていただろうな...と。
あえて何も語らないラストシーンも大好きです。深刻な闇を描いているのに、どこまでも美しい映像も印象的。
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