So

ムーンライトのSoのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.3
「我慢」表面的には一言で言うと我慢の映画。
口数の少ないシャロンに、その心境を早く語らせたくてじらされる。深く心を閉ざしたシャロンにこちらは我慢を強いられて、彼の胸の内からほとばしる無言の圧力に狭い劇場がムンムンとした蒸し暑さを醸しているようだった。

イジメ、ヤク中の母親。恵まれない環境の中で、幼いシャロンは聞く「僕はオカマなの?」

砂浜で並んで座る高校生男子。黒人の男の子同士のキスが思いがけず美しく、その手はベルトへ。

再会した中年男が二人、レストランで想いを手繰り寄せるようにポツポツと探るように言葉を交わし見つめ合う。家に送り届ける車の中でハイウェイに乗ったシャロンに「え?どこに連れていく気?」と乙女心のようなドキドキが高まる。「泊まるところはあるの?」勢いボリュームが上がるカーステレオ。

我慢のオンパレード笑。

脚本やメッセージ性、そして映像や音楽など総合的な素晴らしさは、やはり作品賞を取るだけのことはある。
黒人社会を背景に、一人の人生を幼少期・思春期・中年期と三時制のブロックに分けて描き、同性愛者の葛藤・純愛にうまく光を当てている。

幼いシャロンに芽生えたのは「気付き」。高校生になったシャロンに訪れた「自覚」。大人になりヤク売買人になったシャロンの「純愛」。
状況は次々とシャロンに対して動くのだけど、彼自身の思いはポツポツとした言葉の断片からでしか見えてこない。そこがまたじっとりと内面の在りようを観客に訴えてくる。

月の光の美しさのようにキラキラとした映像美とともに性的マイノリティーの純愛が描かれた、映画として確固たる存在意義を持つ作品。
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