エゴン・シーレの画は、形式的な画風ではなく、死や性など当時タブーとされていたテーマを自由に創作している。その代表作が「ひまわり」や、本作のタイトルにもなっている「死と乙女」である。
一言でいうと、自由奔放な芸術家肌。悪く言うと、性欲とエゴの塊り。名実ともにプレイボーイなんだけど、不思議と嫌味がない。なぜなら本人に全く悪気がないから。
彼が大成したのは、師匠であるクリムトのおかげ。意識したことなかったけど、クリムトの画風はエゴンに影響を与えているようだ。
クリムトはエゴンに絵の指導や資金援助を行う。その一方でミューゼであったヴァリ
をエゴンに譲り(これも残忍非道なのだが)
以後ヴァリはエゴンのミューゼとなり、事実上の恋人関係になるのだが.....
エゴンは女性を性の対象以上に、画の創作対象として見ていたのではないか。
それに対し、
妹のゲルディは最初のミューゼである。映画での表現はないが、おそらく近親相姦の関係だったのだろう。エゴンが死ぬまで献身的に尽くしていた。ゲルディの健気さが何とも可愛く、またやるせなく感じた。
ヴァリは長年エゴンと恋人関係にあったが、兵役につく直前エゴンは世間体から近所に住むエディットと結婚する。もう誰とも結婚しないと怒るヴァリに、あろうことかエゴンは愛人関係を続けて欲しいと願う。その時のヴァリの気持ちを考えると居た堪れない。結局ヴァリはエゴンを想い続け戦線に赴き戦死している。
その時エゴンが描いたのが「死と乙女」で
あり、2人のどうすることもできない関係性が哀愁的に描かれている。
とにかく自己中心的であり、女性への配慮ができない。しかし仕草やアプローチ、ルックスは女性受けし、絵の創作になると全てを投げだしてペンを握る。
女性は彼に惹かれるが、彼は女性を無意識に傷つける。しかし無神経な彼は画を通して女性を愛している。そんな彼ならば仕方ないといった認識から、現在まで彼の画は評価され続けてるのではないだろうか。
そんなことをあれこれ想う実話に近い映画です。