優雅な野獣とはまた言い得て妙かもしれない。
猛々しい助走から生まれるのは、空中で止まって見えるような、その場を支配するようなジャンプ。
素人目にも彼が特別であることはすぐわかった。
恵まれた身体、圧倒的な才能、激しい衝動、、、それは、周りの人はもちろん、セルゲイですら扱いきれないほど大きすぎるものだった。
神様は全てを与えたのに、どうして彼を「踊っているだけで幸せ」にしてあげなかったのだろう？
柄にもなくそんなことを考えた。
「踊りが得意だからといって、踊ることを強いられたくない」「普通の生活がしたい」
というセルゲイの言葉。聞いていてつらかった。
踊りの申し子が、そんな気持ちにならなくてはいけないような世界を憎ましく思った。
踊りでさえも、彼を引き止められないのかもしれないという思いすらよぎった。
だけどわたしは、彼が踊りから離れることはできないだろうと確信していたところがある。
映画を見るまで進退を知らなかったけれど、踊りに魅せられ、生かされる者は生涯、踊りの虜である、と誇張なしに信じているから。
それに、Take me to churchを見て、なぁんだ結局、彼はバレエが好きなんじゃないか、と思った。
舞台を降りた彼の私服姿はあまりにもオーラがあって、エネルギーが行き場に困っているように見えたし、
跳んでいるときは「これだ」と思える、と彼も語っていたし。
ダンサー・セルゲイポルーニンが、踊りとともに生きていく形を見つけられることをつよく祈りながら、この長すぎアツすぎなレビューをおしまいにしよう。。。
