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武曲 MUKOKUのkukkaのレビュー・感想・評価

武曲 MUKOKU(2017年製作の映画)
4.0
とんでもないものを見たなという感覚。

綾野剛さん演じる研吾は、バガボンドの宮本武蔵を思わせる佇まい。酒に溺れ、自堕落な生活を送っていても、剣道漬けの人生が折り目正しさを消しきれない。どんなに腐っても、魂が汚れきれない。そのあたりの表現が、剛さんはすばらしいなと思う。

対する村上虹郎くん演じる高校生・融の登場は背中から。背中だけで見せられるって、その若さで、なかなかすごい。有り余るエネルギーのやり場がなく、暴発しそうな感じの融。混じり気がなく、危うく美しい存在として映れるのは、虹郎くん自身がそういう生き物だからか。

体育館にしろ、庭にしろ、道場にしろ、剣道のシーンは圧巻。そして、研吾と融が発する気や感情が、戦いごとに異なるのがまたすごいなと。体育館での研吾の剣は鬼気迫る。竹刀から体から目から、殺気が発せられていた。それがラストシーンの道場では、まったく違うのだ。

本作最大の決闘シーンで降る黒い雨に、「私の男」の情事シーンで降った赤い雨を思い出した。目に見える現実・事象から飛び越えた世界にいくスイッチのような役割なのかな。

剣を交えるシーンに目がいくが、出会った以上戦わずにはいられなかった2人の物語も見応えがある。

演技だけでなく、有段者役としての説得力ある技と肉体を用意した剛さんには賞賛しかない。剛さん、虹郎くん以外の出演者もすばらしかった。柄本明さん、小林薫さんはもう化け物。個人的には片岡礼子さんの使いどころ!ぜいたくすぎる!
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