ほおづき

退屈な日々にさようならをのほおづきのレビュー・感想・評価

退屈な日々にさようならを(2016年製作の映画)
4.0
これもこわかったなぁw
『あいがなんだ』とは違う意味での人の怖さを見せつけられる映画。

売れない映画監督や俳優たちとその地元の人たちを中心とした群像劇がベースなんだけど、知り合いの知り合いはまた知り合い、みたいな相関図がちょっと複雑で、前半のいくつかのエピソードを忘れてしまうかのように別のエピソードが乱入してきて、実はすべて繋がってますよっていうような、なんだかインディーズ臭が漂う結構挑戦的な作品。


雰囲気も、学生の俳優さんを起用しているらしく?独特なマイナー感があって、監督の経験を数珠つなぎのようにあわせてちょっとずつ肉付けして物語を創ってるんだろうか?どうやってこんな脚本思いつくんだろうって思うような掴みどころのないストーリーと、だいたいセリフだけで回していくゆっくりとした空気感は、ゼッタイに大衆向けじゃなく、人を選ぶ作品だったとは思うけど、この監督さんの他の作品にも感じるどことなくフランス映画っぽいシュールなブラックコメディ感はかなり好み。


監督自身なんだろうか?と思うようなぽんこつ男が登場する序盤30分くらいがほんとに神がかって良くって・・・本当は群像劇なんかにしないで、あの感じのまま突き進んでほしかったけど、ちょっと中だるみしつつまた後半若干巻き返しするも、宗教、同性愛、婦警さん、殺人、自殺、福島、シュレーディンガーの猫、重機、なんだか詰め込み過ぎでもういいよ・・・って展開を見せつつ・・・最後は、つまりどういうことだってばよ!ってなって終わるw


なんだけど、読後感がいい・・・
見終わった後からじわじわくる何とも言えない感じ。ほんとこの人の作品のリアルはこわい・・・怖すぎて中盤寝落ちしそうだったのになぜか見入っちゃう謎の期待感・・・


あえてこのとりとめもない物語のテーマをあげるとすると、人が亡くなっても、その事実を知らされてなければ、その人は人々の中で生き続けてるよねっていうような事を描いていて、例えば芸能人や有名人なんかで今何をやってるかわからなかったり、もしかしたら亡くなっちゃってるかもしれない人でも、人々の心の中では輝かしい時代の姿が刻まれていて、いつまでも生き続けているよねっていうおはなしなのかなーと漠然と思ったりもした・・・・けど
正直そこを描こうとしている後半のある女性が食卓で語るシーンは、意味不明でぐだぐだ。そもそもあなたが来なければ全員幸せやったんやで!とつっこみたくもなった・・・


またディスりレビューになってしまいそうだけど・・・この監督さんの良さはやっぱりぽんこつ人間の人物描写のうまさなんだと思った。
『パンとバスと2度目のハツコイ』みたいなゆるふわピースフルなものよりも、『あいがなんだ』やこの映画の序盤のような、ダサ男や拗らせ女子をホラーテイストに生々しく描く作風のほうがイキイキとしてる気がする。