atsushi

退屈な日々にさようならをのatsushiのレビュー・感想・評価

退屈な日々にさようならを(2016年製作の映画)
3.9
2020/01/14 1回目
【2020年11本目】
〜十字架と仏壇〜
いやあ、良い。
この作品のタイトルはカネコアヤノの同名楽曲から引用したようです。

"壊れかけの機械のように今日も動き回る"

こんな歌詞があるのですが、よくある何の予定もない休日の情景が思い出されます。
思えば、劇中にも壊れかけの機械が動き回るシーンが出てきます。

2人がただただ朝食を食べるシーン、これは退屈な日常の表現ですが、監督はここで長回しを使用しています。
これって結構リスキーだと思うんですよね。観ているこちらも退屈しますからね。
しかし、そこは今泉監督、一定のリズムで暗転を差し込むことによって、観客の集中力を維持させています。さすが。
一方、そんな退屈な日々とは正反対の"死"が印象的にいくつか出てきます。そんな死に関するある台詞。

"死んだことを知らないってことは、まだあなたの中では生きてるってことですよね"

確かにそう。だけど。
いやあ、突き刺さりますね。やるせない。
この映画が明らかに意識している東日本大震災を想うと尚更。

とはいえ、これまでの今泉エッセンスは健在。
ダメダメ男の梶原が言う

"映画は良くて、MVはだめってどうなの?"

に思わず、いやお前やないかいと無言のツッコミを入れてしまう。可笑しい。

それから、個人的に好きなところを一つだけ、
仏壇の中に飾られたキリストの十字架。
この折衷感、たまりません。
折衷感こそ、私が映画に求めるものな気がします。

タランティーノ的時系列、今泉的群像劇、また観よう。
atsushi

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