お互いに殺意を抱いた中年夫婦とその周辺のドラマはやや緩慢で何度か眠気に襲われたけれど、殺害シーンからの前半に起きた出来事が伏線となり生かされていく後半の怒涛の展開が圧巻で思わず唸らされた。そして前半は冴えない親父だった夫ミシェル・シモンによる事件を起こしてからの変貌ぶりの素晴らしさ(さすがフランスを代表する名優)、ギャグタッチで描かれているけれどあれは下手なサスペンスのどんでん返しより怖いよ。
裁判という権威が崩壊してもたらされるハッピーな結末は、戦後ナチスに協力していたという理由で一時芸能界での活動を停止させられていたギトリの愛するフランスへの不信感とニヒリズムが出ているように感じられるのは穿ち過ぎか。
役者やスタッフを慰労しながら紹介するオープニングが独特。