似太郎

ビリディアナの似太郎のレビュー・感想・評価

ビリディアナ(1960年製作の映画)
4.6
ルイス・ブニュエル監督による辛辣な堕落した金持ち批判劇。宗教的な背景をちゃんと理解しないと、ついていけない内容かも知れない。

初期メキシコ時代のブニュエルは娯楽と前衛の両方を往来する作風が個人的には好きだったのだが、本作と『皆殺しの天使』では完全にシリアスに徹した雰囲気が特徴。強欲な土地の権力者役フェルナンド・レイの姑息さが如何にもブラックユーモア的に描かれている。赤塚不二夫の『ギャグゲリラ』にも通じる風刺精神。

当時かなりセンセーショナルだった本作、今で言うラース・フォン・トリアーとかミヒャエル・ハネケみたいなもんだからカンヌ映画祭でパルムドールを獲るのは至極真っ当な事と言える。ブニュエルらしいシュルレアリスム度では次作『皆殺しの天使』や『砂漠のシモン』に軍配が上がるが、こちらも大いに傑作と言える。

前半のノコギリの音のみのシーンはいつ観ても瞠目する。「映像」ならではの心理的作用が働きゾクゾクさせられる出来栄えとなった。
似太郎

似太郎