ダイセロス森本

浮き草たちのダイセロス森本のレビュー・感想・評価

浮き草たち(2016年製作の映画)
4.7
日常にあふれたニューヨークとその周りを使いながら非日常で見るものを囲む。こんなに面白い映画は久しぶり。

”ブリーフケースを運ぶだけだ” 兄の代わりに仕事を請け負うことになった弟君カラムは、ケースを全然違う人に渡してしまう。彼を送り届けるだけの仕事だったはずの女性はその事実を知りボスに連絡、すると「彼と一緒に動いて最後までブリーフケースを届けられたら報酬を彼の分もやる」という。お金に困り果てていた彼女はその案に乗り、ふたりだけの旅が始まる。

協力してブリーフケースを探しに行くのがかわいらしくて、喧嘩しながらも弟君の良さに気づいていく女性の描き方がとてもきれい。
「バーテンだった」といえば彼はバーテンだった友達のことを語りだして「嘘よ、ストリッパー」というと戸惑ったり。可愛くて素直な彼にだんだん気になり始めていく彼女の様子、でも裏にある自分の背景を知られたくないから隠したり、つっけんどんなことを言ってしまう。

トカゲを見つめながら二人で会話する幕で個人的には「落とした!」と思った。

"I don't know why they give kids pets that die so young."

"Maybe let'em be sad about something small before the really sad things happen."
って返すカラムちゃん。

いやあ、なんかおちますよねこれ、結婚しようって思うわ。笑


この終わり方もまた素晴らしく、ここで途切れるからこういう恋は「美しく」描けるのだと思う。これ以上描けけばそれは違う映画になるし、これ以下を描いても違う映画になってしまう。このTRUMPSは、ここまでがTHE BESTな作り方。素晴らしいと思う。

いいね、にやってできる終わり方。

きれいで面白くて非日常的なのに日常にあふれた、先しか見ない若者の良い数日間。