七沖

オリエント急行殺人事件の七沖のレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.8
トリックを楽しむ映画ではなく、人間ドラマにしんみりさせられる作品だと思った。

オリエント急行に乗り合わせた名探偵ポアロが、車内で起きた殺人事件の解決に乗り出す。だが乗客の全員が疑わしく捜査は難航し…というストーリー。

恥ずかしながら、アガサ・クリスティーの作品に触れるのは今回が初めて。オチも知らない状態での鑑賞となった。
真相は最後のタネ明かしまで分からず、まんまと騙された。今思い返すと伏線は色々あったのに、気づけず悔しい。今までミステリーにはほとんど触れずに人生を歩んで来たせいか、自分には先読みや伏線に気づく力があまりにも無さすぎる…。

面白かったのだが、個人的に気になったのが、主人公ポアロの魅力の伝わりづらさについてだ。昔から支持されてきたミステリー作品だけに、本作のポアロの魅力の無さにちょっと違和感を覚えた。何というか…彼の行動に共感出来ないのだ。鮮やかな推理はもちろん凄いが、ふとした瞬間の会話にイマイチ共感出来ず、ラストで下した彼の決断も「あ、そういう結論でいいんだ」という感じで一歩引いた場所からポアロを見ていた感じだ。
自分の中に名探偵ポアロというキャラクターが根付いていないせいだと思うが、逆に言うと、初見の人に本作だけではポアロの魅力は伝えきれないのでは…と思ってしまった。

とはいえポアロを観たことがない自分のような人間には間違いなく楽しい映画体験が出来ると思うし、なんだかんだ言いつつオチには涙腺が緩む作品だった。

本作を観ていると、小さい時にブルートレインに乗って旅行したことを思い出す。いつかまた列車に乗って夜通しの旅をしてみたい。そう思えるだけで、この映画を観た価値はあったと思う。
七沖

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