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オリエント急行殺人事件のIdetanのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.5
豪華寝台列車「オリエント急行」に乗ったポアロだが、吹雪の為列車は脱線してしまう。その車内でアメリカ人富豪ラチェットが殺されているのが見つかり、事件の真相を突き止めるべく乗客に聞き込みを開始する。

とにかく豪華キャストである。そして車内という密室殺人である為、映像が単調になりがちだが、雪山の景色をうまく利用し、とても美しい映像となっている。

ポアロは、「世の中には善と悪しか無く、中間は存在しない。」というセリフから分かるように厳格な秩序を好む。
それは、冒頭の朝食に卵を2つ頼み大きさが同じか確認したり、片足で糞を踏んでしまった際、もう片方の足も糞に入れて均衡を保つというシーンで表現されている。

ラストの謎解きのシーンは印象的である。
「嘘を重ねれば騙せると思ったか。騙せぬものが2人いる。神とエルキュール・ポアロだ。」そう言い放ったポアロの先には、トンネルを背に最後の晩餐の構図で並んだ乗客がいる。

「この中に人殺しはいない。だが人を殺したものはいる。」これも意味深である。
謎解きが終わり、列車を降りるポアロは、
今回は自分の心に耳を傾けようと心に決める。そして、「善と悪を図る天秤が釣り合わない。今回はアンバランスを受け入れます。」と言う。

あれだけ秩序を好み、中間は無いと言い切っていたポアロが最後はアンバランスを受けいれる。
それは、神と同列に並べた自身の慈悲なのだろうか。それとも自らもこの事件の原因に対しての後ろめたさがあったのだろうか。
いろいろ考えさせられる映画であった。
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