しん

オリエント急行殺人事件のしんのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.5
2018.08.22
原作はミステリ好きなら一度は目にした事がある作品であり、そういった意味では物語の結末を踏まえた上で鑑賞する為、映画としてどう表現してくるのかが主題となる。
興味深いのはポアロの完璧主義者の思考と、事件の落とし所における葛藤のぶつかり合いがとても良く表現されていた点。
ラストの場面が最後の晩餐をなぞらえている点、ポアロが自身を神と同列に捉えている点。裁くもの、裁かれるもの。
役者陣の演技も相まってラストシーンにおける流れが非常に情緒性豊かに表現されているように感じた。
どこか刑事コロンボの忘れられたスターという話が頭をよぎる。その話の物語の結末はトリックうんぬんより、容疑者が殺人を犯した事実すら忘れてしまった、という部分に驚かれされた。
そして彼女は病で記憶が維持できず後2ヶ月の命。
彼女を思うパートナーが身代わりになろうと自分がやったと自白する。
そんな嘘すぐ崩せる、コロンボは言う。
男は言う、2ヶ月持てばいい。
そうね。コロンボは彼女が真犯人と分かっていながら男を連れ出す。
初めてコロンボが犯人を逮捕しなかった事件であり、トリックよりもそのラストの2人の対峙が最高すぎて至極の名作に仕上がっている。
罪を裁くことが正しいのか、人の善悪の境界線はどこにあるのか?改めて考えさせられた。
とりあえず今作の結末を知らずに鑑賞できる人、とても羨ましく思う。
しん

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