糸くず

四十年の糸くずのレビュー・感想・評価

四十年(2016年製作の映画)
3.7
台湾のフォーク歌手たちが、台湾でのフォークソング誕生40周年を記念して開催したコンサートの模様を記録したドキュメンタリー。

ピーター・ポール&マリーやサイモン&ガーファンクルのような、民謡のような素朴なフォークソングに始まり、政治や社会を批判的に見つめたプロテストソング、日常の何気ない心情を描く「四畳半」的フォークソング、ポップスとの融合と、日本のフォーク~ニューミュージックとほとんど同じ歴史をたどっていることに驚かされる。台湾のポップスについては無知なので、当然のことながら初めて聴く曲ばかりだったが、高校生の時に聴いた吉田拓郎や岡林信康を彷彿とさせるパワフルな楽曲が目白押しで、とても興味深かった。

ホウ・チーラン監督は、かつてのフォーク歌手たちが、今も音楽に情熱を感じているのか、作ってきた音楽に恥じない生き方をしているのかに焦点を当てている。

つまり、過去の音楽を通して、彼らの今を照射している映画であって、フォークソングそのものの歴史や台湾の歴史そのものは背景であり、彼らの現在の生活と音楽との関わりが主眼である。

だから、とっつきにくい映画ではある。また、「個人から歴史や〈いま〉が立ち上がる」、そういったことがうまくできているとは言い難い。フォークソングの影響を受けた若いアーティストのインタビューがあってもよかったのでは。もっとも、歴史については、わたしは台湾の歴史を知らないから、台湾の人が観たらまた感じ方が違うのかもしれない。

今回観た「アジアの未来」部門の映画の中では、一番好きかな。監督は日本のポップスにも興味があるらしく、それこそ吉田拓郎を聴いたりしているみたいなので、「ホウ監督が撮る日本のフォーク」をちょっと期待してみる。
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