近藤真弥

聖なる地獄の近藤真弥のレビュー・感想・評価

聖なる地獄(2016年製作の映画)
3.6
仕事で再見。カルト教団のブッダフィールドを追いかけたドキュメンタリーで、元メンバーのインタヴューを通しておぞましい内実を伝えている。

正直僕は、なんでカルトなんかにハマったの?と元メンバーを責めることはできません。冒頭でレーガンの姿が映し出されるけど、当時の世界情勢が背景にあったからこそ、ブッダフィールドのような教団に救いを求めてしまったんだろうなと。このあたりは、教団の最盛期である80年代後半に起きたセカンド・サマー・オブ・ラヴというムーヴメントを想起した。

ただ、ブッダフィールドとセカンド・サマー・オブ・ラヴは決定的に異なる。前者がひたすら現実から逃避して禁欲的な志向を持っていたのに対し、後者は逃避願望を持ちつつも、それを権威や現実と戦う手段として用いましたからね。欲望にも忠実だったし、だからこそエクスタシーも流行った。

信仰と真実が入れ替わってしまう集団心理の怖さは、カルトに限らずさまざまなケースに当てはまると思う。社会運動、教育、政治などなど。ポスト・トゥルースなんてモロにそうじゃないですか。この映画が浮き彫りにする怖さは、現実の怖さでもある。

ちなみにこの映画、去年のサンダンス映画祭に参加している。社会から逸脱してしまった人たちに対する眼差しを意識した映画祭だよなあとあらためて実感しました。
近藤真弥

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