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THE BATMAN-ザ・バットマンーのkazooのレビュー・感想・評価

3.7
知能犯リドラーとの対決を最高にダークな世界観で描く。さらに監督はマット・リーヴスと聞いたら観ないわけにはいかなかった今作。期待を裏切らない暗さ(画面自体も)と気味の悪さは、さすがだが、3時間という長さを埋めるには単調な謎解きと、バットマンの感情の見せ方に難があったのは否めない。

擦られすぎたバットマン誕生ではなく、2年目という設定が良い。暗闇をじっと見せる表現からやりすぎなアクションまでの流れは、どこかで見た様な日記語りがなければ完璧に近い。

そして奇天烈なヴィランではなく、現実の延長線上をいくリドラーをメインに置いたのも効いている。あからさまにバットマンの行動と共通性を見せるのも気味が悪くて最高。そして所々に挟まる笑いも主張しすぎないことでちゃんとクスッとできる。

しかし物語が進むとどうも見たことあるシーンが目立つ。犯行声明の動画もそうだし、面会シーンもやはり「ダークナイト」の影がチラついてしまう。殺人の仕掛けはもうアレでしかない。ゲーム性を持たせたいのはわかるが、猟奇的さを出す方法は他にもあった気がしてしまう。
さらに謎解きもあまり印象に残らない。
ただそれに右往左往させられるバットマンにもガッカリ。

音楽は素晴らしい。予告編で使ってた音楽本編では使わない映画も多々あり、ガッカリすることがあるが、今作ではしっかりと使っていて好感。「この世界観にはこの音楽でしょ」と観客のツボを心得た手腕に唸らされる。
映像も良い。この監督はどうしてもバットマンをびしょびしょにしたいようだが、なるほど雨に濡れたバットマンはカッコいい。

出演者もハマり役ばかり。ゾーイ・クラヴィッツの妖艶さと危うさが同居した役は良かったし、何より良かったのはゴードン役のジェフリー・ライトとペンギン、コリン・ファレル。ゲイリーオールドマンという高い壁があったが、こういう演じ方もあったかと納得させられる演技。リドラー役ポール・ダノの良さは言わずもがなだが、全く本人とわからないコリン・ファレルのある種のポップさがいい味変となっている。ただバットマン役のパティンソンの頬のコケ方や虚ろな目などヤバい感は、少しやり過ぎで、感情の昂ぶりも暴力頼みばかりであまり印象に残らなかったのも事実。

話が散漫になってしまったが、それほど語りたいことがある作品。結局次回作も楽しみなバットマン映画だった。
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