菩薩

汚れたミルク/あるセールスマンの告発の菩薩のレビュー・感想・評価

4.0
某巨大多国籍企業による人命より利益優先の非人道的行為に告発の声をあげた一人のセールスマンの行動を映画にしたいのだけど、結局それをやるにはあまりにもリスクが大きすぎるから企画が頓挫すると言う事態をそのまま映画にしてしまった作品。要するにこの時点で某巨大多国籍企業に対する告発と、リスクと利益の前では正義を叫ぶ声さえも掻き消される社会に対する二重の意味での告発が成されてる点は非常に効果的な作品だと思う。「汚れたミルク」と言うからには、日本における森永ヒ素ミルク中毒事件や、記憶に新しい中国メラニン混入毒ミルク事件が想起されるが、この場合はミルク自体が汚染されているわけではなく、通常の粉ミルクを汚染された水や間違えた使用法で使う事による発生する弊害であり、これすらも「告発」そのものの習性やこの社会の本質を物語っているような気がする(けど個人的には社会そのものが毒ミルク…)。要するに難しいのはこの点で、「ミルク自体には問題はない」→「ではその責任は?」と言う事であり、使用者なのか販売者なのか、かつこの告発者自身がその販売拡大に進んで加担していた過去を持ち、かつやってはいけないことを…とここは是非ご覧になって確認していただきたいし、何より重要なのは「赤ちゃんが死んでいる(いた)。」という事実に他ならない。巨悪を前にそれに立ち向かうにはこちらは純粋たる善で無くてはならないと言う、あまりにも不条理で不合理な風潮、もはや聖人無き世の中において、かつこの保守的な日本において第二第三のスノーデンは現れるのか…。劇場スッカスカでしたけど、勉強になるし、主人公の嫁超綺麗だし観て損は無いと思います。
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