こーた

汚れたミルク/あるセールスマンの告発のこーたのレビュー・感想・評価

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この映画を作ろうとしている製作者の視点、というワンクッションをはさむことで、映画のなかと、われわれ観客とが、ひとつづきになる。
と同時に、告発者の証言は真実なのか、というメタ的なサスペンスまで生み出されている。
主人公アヤンは、自分に都合のいい証言をしているのではないか?
いや、このテーマはストレートに扱えないほど、大企業の圧力が大きいということなのか?
でも映画が現に公開されているということは……?真実はいずこ?
虚構と現実の境界が、次第にあやふやになっていき、最後には観客もろとも、藪の中にとり残される。
スクリーンの枠を取り去る見事な話法に、しばし呆然となった。

ところで、もしあなたが営業の仕事をしていて、エライひと、たとえばそれはお医者さんのような、社会的に位の高いひとと、どうしてもお近づきにならなければ、と思っているのなら、アヤンのアプローチをマネしてみるといいかもしれない。
まずは、お近づきになりたい本人を直撃する前に、その周囲で働いているひとたちと仲良くなろう。
かれらはターゲットの性格や、好きなものを教えてくれるし、うまくいけばあなたのために、便宜をさえ図ってくれるかもしれない。
仕入れた情報を、ターゲット本人との会話の糸口にしよう。
仕事のはなしを、いきなり持ち出してはいけない。やっと本人に会えて、早く本題に入りたい気持ちはわかるが、焦ってはいけない。
だれだってわざわざ時間を割いてまで、仕事のはなしなんてしたくないからだ。
まずは、相手の好きなもののはなしからだ。自分が好きなものを、同じように好きといって共感してくれる人間を、無碍に扱うのは難しい。
退屈な仕事のはなしは、十分仲良くなってからでも、けっして遅くはない。

ターゲットの周辺で仲良くなるのは、なるべくなら女性がいい。女たちの他愛ない噂話に、耳を傾けよう。休憩室のおしゃべりにこそ、たくさんのヒントが隠されている。
渋る相手には気前よく、お菓子をあげよう。甘いものを貰って、イヤな顔をする女はいない。笑顔でチョコレートを配れ!
それに、困ったときに助けてくれるのは、いつだって女だ。
あなたが組織に楯突いて窮地に陥ったとき、そっと裏口から逃がしてくれたり、どこかへ匿ってくれたり、救いの手をさしのべてくれたりするのは、きっと名もない女性たちだ。
組織に抗う無頼の立場に共感してくれるのは、男社会に息苦しさを感じている女性たち、ということなのかもしれない。
そんなわけで女性には、日ごろからやさしく接するよう、心がけよう笑。