ゆうすけ

ゲット・アウトのゆうすけのレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
3.5
自分が求めるものは、どのように手にするだろう。欲しいものが物理的に手に入らない場合、人は倫理を忘れてしまうこともある。でも、我々は倫理や概念だけで、その人を否定することはできない。というより、してはいけない。そもそも我々の倫理や概念が人様からしたら、算数のような単純な計算にならないかもしれない。なぜ、円周率があれほど長いのか。輪ですら答えがないようなもの。だからこそ、いい加減な数字でも成り立つのである。成り立たせているのである。
自分が描く人の価値観は、人に話すものではない。世間的には、人種差別という社会問題と共に、国境を越え、性別を越え、議論を重ねる。歴史的な背景を何も知らない私が口に出すことすら不謹慎と思っている。
狂気的な感覚は、誰しも持っているだろう。そして、価値観がその狂気を全てコントロールしている。その価値観が合う人が増えれば増えるほど、狂気を凶器に代えるエネルギーが倍増していく。これも単純な掛け算ではないだろう。私が心がけていることは、その価値観を合わせることではなく、分散させることだ。株や不動産や保険のような資産分散と同様である。ただ、決して簡単なことではない。価値観の分散は、興味の目減りでもあり、本質の見失いにも繋がる。それでは、分散していることすらわからないくらい、小さな価値観しか残らないだろう。たやすいことではない。
しかし、分散せずに凶器に換えてしまっては元も子もない。怒号と共に撮り鉄が揉めている動画も目にする。サッカーのサポーターが暴動するシーンも見かける。国益が戦争を生んでいる。薬に頼ってリングの上で殴り合ってもいる。分散の価値観もまだ分散しなければならないのか。心がけていても、正解はない。
そんな繊細かつ未熟な自らの価値観を、勝手に過大評価し、答えと言い張る。人の身を借り、そんな自分の価値観を社会に残し続ける。それこそが一番ナンセンスであろう。
本作の本質は、個人的には“ナンセンスの忘れ物”である。結局これも私の価値観の分散のひとつにすぎない。
ゆうすけ

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